自治体や国会を問わず、「議会」と聞くと難しいイメージを持つ人が多いですが、地域住民の生活に最も直結しているのが地方議会です。特に、議会でよく登場する 「一般質問」 と 「答弁書」 は、住民の声を行政に届け、政策改善につなげるための重要な仕組みです。
本記事では、一般質問の意味、目的、流れ、質問を受ける行政側の準備方法、そして必ずセットで登場する「答弁書」とは何かを、完全初心者向けに丁寧に解説していきます。

1. 一般質問とは何か
◆ 一般質問の定義
一般質問とは、議会議員が行政に対して政策・事務・地域課題などについて質問し、説明や改善を求める制度のことです。
主に 定例会(年4回程度) の場で行われ、議員が市長・町長・知事などの執行部に対して直接問いかけることができます。
◆ 一般質問の目的
一般質問は、単に行政に説明を求めるだけの場ではありません。大きく3つの目的があります。
1. 行政の動きを確認し、透明性を高める
行政がどんな施策を進め、どんな課題を抱えているのか、議会と住民に共有する役割があります。
2. 住民の声を行政に届ける
議員は地域住民の代表です。住民から寄せられた声や不満を質問を通じて行政にぶつけることで、改善を促します。
3. 政策提案や改善提案を行う
質問を通じて、議員が自らの政策テーマを示したり、新しい取り組みを提案することも可能です。

2. 一般質問で扱われるテーマ例
一般質問のテーマは非常に幅広く、地域ごとに異なります。主な例としては以下のようなものがあります。
- 子育て支援、保育園の待機児童問題
- 高齢者福祉、介護施設の不足
- 道路整備、交通安全対策
- 防災・減災対策、避難所の整備
- 学校教育、教員の働き方改革
- ごみ処理、資源循環
- 行政のデジタル化(DX)
- 職員の働き方、庁舎環境
議員が自由にテーマを選べるため、地域の課題が議会で可視化されやすい仕組みです。
3. 一般質問の流れ
一般質問は次のような流れで進みます。自治体ごとに細部は異なりますが、大枠は共通です。
(1)通告(質問の提出)
議員は「どのような質問を行うか」を事前に議会事務局へ提出します。これが 質問通告書 です。
通告には以下が含まれます。
- 質問の項目
- 質問の趣旨
- 取り上げる背景
- 行政に求める答えや方向性
これを基に行政側(市役所など)が答弁準備を始めます。
(2)執行部(行政)による答弁書作成
通告内容が議会事務局から行政の各課に伝わり、担当課は**「答弁書」** の作成に取り掛かります。
この答弁書が、議会での口頭答弁のベースになります(詳細は後述)。
(3)本番(議会での質問・答弁)
議会本会議で、議員が登壇して質問し、行政側が答えるという流れで進みます。
一般的な形式は以下の通りです。
- 議員の質問(1回目)
- 市長または部長などの答弁
- 議員の再質問
- 行政側の答弁
- 必要に応じて三質問、四質問…
議員が細かく質問を掘り下げることで、行政側の対応や課題がより明確になります。
(4)一般質問後の行政対応
一般質問は「言って終わり」ではありません。
- 改善策を検討する
- 他部署と協議する
- 住民アンケートなどを実施
- 実際に事業化する
など、後の行政運営に反映されることが多くあります。

4. 答弁書とは何か
一般質問とセットで必ず話題になるのが 答弁書(とうべんしょ) です。
◆ 答弁書の定義
答弁書とは、議員の一般質問に対して、行政側が用意する 回答内容をまとめた文書 のこと。
議会で市長や部長が答える内容の「台本」のような役割を持っています。
◆ 答弁書に書かれる内容
答弁書には、質問項目ごとに以下のような内容が整理されます。
- 行政の現状
- これまでの取り組み
- 法的根拠や事務の範囲
- 課題やできない理由
- 今後の方向性や改善方針
特に「今後どうするか」という部分が重要で、議員の要望にどう応えていくのかが問われます。
◆ 答弁書作成の流れ
- 質問通告を受け取る
- 担当課が内容を分析
- 必要なら現場や関係部署に確認
- 文案作成
- 課内でチェック
- 上司・部長・副市長などの決裁
- 市長答弁の場合はさらに丁寧に調整
議会前の行政は「答弁書づくり」に追われる時期でもあります。
5. 行政側にとっての答弁書の重要性
答弁書は単なる文書ではなく、行政の政策や姿勢を示す大事な公式文書です。
◆ 1. 誤った情報を答弁すると行政全体の信用に関わる
議会での答弁は公開され、議事録として残ります。
そのため、誤った答弁や不正確な表現は絶対に避ける必要があります。
◆ 2. 行政の方針を整理する機会になる
質問への回答を準備する過程で、
- 現状の整理
- 課題の特定
- 他部署との調整
- 今後の方針の明確化
が自然と行われます。これは行政にとってとても有益なプロセスです。
◆ 3. 説明責任を果たすための必須ツール
住民代表である議員の質問にしっかり答えることは、行政の重要な責務です。
6. 一般質問と答弁書が地域にもたらすもの
一般質問と答弁書のやり取りは、地域運営に大きな価値をもたらします。
◆ 住民の声が行政に届く
例えば住民が困っていた「夜道の暗さ」や「信号の設置要望」が、議員を通じて改善されるケースは多くあります。
◆ 行政の課題を発見できる
議員からの指摘で、行政が見落としていた課題が明らかになることもあります。
◆ 施策の改善が進む
質問がきっかけで、施策が再検討され改善されることも一般的です。
7. 行政職員が知っておくべきポイント
行政職員の方に向けて、答弁書作成のコツをまとめます。
● 1. 質問通告の意図を正確に読む
議員が何を求めているのか、背景や目的を読み取ることが重要です。
● 2. 事実関係の確認は徹底
数字、制度、過去の答弁内容など、公式文書で裏付けできるものを必ず確認すること。
● 3. わかりやすく説明する
専門用語を並べすぎず、住民にも理解できる表現にすることが大切です。
● 4. 今後の改善方針は誠実に
嘘や誇張は絶対にNG。できること、できないことを正直に書くのが基本です。
● 5. 市長答弁の場合は慎重に
市長の方針との整合性、全体施策との調整が必須です。
8. まとめ:一般質問と答弁書は行政の質を高める重要な仕組み
一般質問は、議員が行政に問いかけ、住民の声を政策へ反映させるための重要な制度です。
そして、答弁書はその質問に対して行政が丁寧に答えるための公式文書であり、行政の姿勢が最もよく表れる部分でもあります。
- 行政の説明責任
- 住民サービスの向上
- 地域課題の可視化
- 施策改善のきっかけ
これらすべてに直結するのが、一般質問と答弁書です。
初心者にもわかりやすい視点で理解することで、議会の仕組みがぐっと身近に感じられるはずです。


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