私たちが働いて給料を受け取るとき、多くの人が「税金が引かれて、手取りが少なくなっている」と感じたことがあるはずです。この引かれている税金の代表が源泉徴収です。
しかし、源泉徴収とは具体的に何をしているのか?
なぜ勝手に税金が天引きされるのか?
どんな仕組みで計算されているのか?
これらを正確に説明できる人は意外と多くありません。
この記事では、源泉徴収の意味、仕組み、対象になる所得、仕組みのメリット・デメリット、確定申告との関係まで、わかりやすく徹底解説していきます。

1. 源泉徴収とは?簡単に言うと…
源泉徴収とは、
お金の支払い側が、支払うときにあらかじめ税金を差し引いて国に納める仕組み
のことです。
例えば会社員の給料では、次のようになります。
- 本来もらう金額:30万円
- 源泉徴収される所得税:1万円
- 手取り:29万円
この「1万円」が源泉徴収税額です。
つまり、
国が取りっぱぐれのないよう、先に税金を徴収する仕組み
とも言えます。
2. なぜ源泉徴収という仕組みが必要なのか?
源泉徴収が導入されている理由は大きく3つあります。
理由① 税金の取り漏れを防ぐため
もし国が毎年国民全員に「確定申告をしてください」と言っても、多くの人がやらない可能性があります。
- 手続きが難しい
- めんどくさい
- そもそも必要性がわからない
こうした理由で申告しない人が増えると、国は本来得られる税収が得られなくなります。
そのため、給与を支払う会社などに代わりに徴収させる仕組みが必要になったのです。
理由② 税金負担を平準化できるため
もし源泉徴収がない場合、会社員は1年に1回、まとめて税金を納めることになります。
たとえば、
- 年間12万円の税額 → 12月にいきなり12万円の請求…!
こうなると、急な出費で生活に支障が出てしまいますよね。
源泉徴収があれば、
- 毎月1万円ずつ徴収
- 家計への負担が一定
- 大きな出費にならない
というメリットがあります。

理由③ 多くの人が税金の手続きをしなくて済む
もし源泉徴収がなければ、会社員も学生もパートも、みんなが毎年確定申告をしなければいけません。
源泉徴収があることで、
- 会社員のほとんどは確定申告が不要
- 年末調整で自動的に精算される
- 手続きの負担が大きく減る
という利点があります。
3. 源泉徴収の対象となるお金(所得)
源泉徴収は、給与だけに限られません。実はさまざまな所得が対象になります。
以下は主な源泉徴収対象です。
① 給与所得(会社員・アルバイト・パート)
最も代表的なケースです。
毎月の給料から以下が差し引かれます。
- 所得税
- 復興特別所得税(2.1%)
住民税は「給与天引き(特別徴収)」ですが、厳密には源泉徴収とは別扱いです。
② 退職所得(退職金)
退職金も源泉徴収の対象です。
ただし退職所得控除があるため、税額は通常の給料よりも有利です。
③ 利子所得(銀行の預金利息)
銀行の利息には最初から約20%の税金が引かれています。
引かれた状態で振り込まれているため、自分で申告する必要はありません。
④ 配当所得(株の配当金)
株式の配当金も源泉徴収されます。
ただし確定申告すれば還付される場合があります。
⑤ 不動産の賃料の一部(業務委託契約の賃料等)
個人の不動産オーナーに支払う賃料では、その一部が源泉徴収の対象になるケースがあります(すべてではありません)。
⑥ 原稿料・講演料・報酬など
フリーランスに支払う報酬の多くは源泉徴収されます。
- 原稿料
- 講演料
- デザイン報酬
- 翻訳料
- 業務委託報酬
など、多くの報酬が対象です。
⑦ 弁護士・税理士など専門家への報酬
士業への報酬も源泉徴収されるため、
- 報酬:10万円
- 源泉徴収税額:1万円(例)
- 実際の振込額:9万円
のようになります。
4. 給与の源泉徴収はどのように計算されるのか?
給与の源泉徴収は複雑な計算式で処理されていると思われがちですが、実際は**国税庁の「源泉徴収税額表」**に基づいて月ごとに税額を決めています。

ポイント① 月額を基準に計算する
源泉徴収は「年間」ではなく「毎月」で計算します。
- 収入が増える月は税額も多くなる
- ボーナス月はまた別の計算
となっています。
ポイント② 扶養人数で税額が変わる
扶養する人数が増えると、その分税率が低くなります。
- 扶養なし:税額高い
- 扶養1人:税額少ない
- 扶養2人:さらに少ない
というイメージです。
ポイント③ 社会保険料を差し引いて計算する
税額は「給与の総支給額」ではなく、
給与 − 社会保険料
が課税対象になります。
社会保険料には、
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
などが含まれます。
5. 年末調整と源泉徴収の関係
源泉徴収は「仮の税金の天引き」です。
なぜなら、毎月の所得税は「概算」で引いているからです。
そこで、12月に入ると、次のような作業が行われます。
年末調整とは?
年末調整は、
1年間の所得税を正しく計算し、毎月の源泉徴収との差を精算する手続き
です。
つまり、
- 源泉徴収していた額の方が多い → 還付される
- 源泉徴収していた額の方が少ない → 追加徴収される
ということです。
年末調整で使う主な控除
控除の内容によって税額が大きく変わります。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 住宅ローン控除
などが反映されます。
6. 源泉徴収のメリット
メリット① 会社員は確定申告が不要
源泉徴収と年末調整によって、会社員の多くは自分で確定申告する必要がありません。
これは大きな負担軽減です。
メリット② 税金を一度に支払わなくてよい
毎月少しずつ徴収されているため、大きな金額を突然支払う必要がありません。
メリット③ 国にとって確実に税収が得られる
税金の徴収漏れが減り、安定した税収が見込めます。
7. 源泉徴収のデメリット
デメリット① 手取りがわかりにくい
- 思っているより手取りが少ない
- 年末調整でどれだけ戻るかわからない
など、給与明細が読みにくくなる面があります。
デメリット② フリーランスは複雑になることがある
業務委託の場合、
- クライアントが源泉徴収
- フリーランス自身が確定申告
という形になるため、処理が複雑に感じることがあります。
8. フリーランスと源泉徴収の関係
フリーランスにとって源泉徴収は非常に重要なポイントです。
例えば、10万円の仕事をした場合:
- 本来の報酬:10万円
- 源泉徴収税額:1万円
- 振込額:9万円
しかし、確定申告時に経費や控除を計算すると、
- 返金される(還付)
- 追加で払う(納付)
どちらかになります。
多くのフリーランスは還付されるケースが多いです。
9. 源泉徴収は「税金の前払い」
源泉徴収を一言で表すと、
税金の前払い制度
です。
つまり、
- 毎月の給与
- 報酬
- 利息
- 配当金
などから、あらかじめ税金を差し引いておき、
年末や確定申告で「本来の税額」と調整を行います。
10. 源泉徴収を理解しておくと良い理由
源泉徴収を理解しておくと、以下のメリットがあります。
① 給与明細が読めるようになる
- どの税金がいくら引かれているのか
- どの控除が適用されているのか
が理解できます。
② 年末調整の仕組みがわかる
なぜ書類が必要なのか、どの控除が返金につながるのかがわかります。
③ フリーランスの収入管理がしやすくなる
源泉徴収の仕組みを理解しておくと、
- キャッシュフローの把握
- 確定申告の準備
- 税額の予測
がしやすくなります。
④ 税金で損をしなくなる
控除や申告漏れを防げるため、払いすぎを減らすことができます。
まとめ:源泉徴収とは何か?
最後に要点を整理します。
✔ 源泉徴収とは?
支払う側が税金を差し引いて国に納める制度。
✔ 対象になるのは?
給与、賞与、退職金、報酬、銀行利息、株の配当など。
✔ なぜ必要?
税金の取り漏れ防止、負担の平準化、確定申告不要にするため。
✔ 年末調整とは?
源泉徴収の「精算(清算)」作業。
✔ フリーランスも源泉徴収される?
多くの報酬で発生する。確定申告で還付されることも多い。
源泉徴収は確かに複雑に見えますが、
「税金の前払い」
と考えると非常にシンプルです。
この仕組みを理解すれば、
- 給与明細が読めるようになり
- 税金で損をしなくなり
- 生活の計画も立てやすくなる
といったメリットがあります。


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