私たちは日常的にインターネットを使っていますが、「DNS」という言葉を聞いたことがある人は少なくありません。
しかし、「実際に何をしている仕組みなのか?」と聞かれると、多くの人が曖昧な理解のままです。
DNSは、インターネットを快適に使うために欠かせない“住所録”のような仕組みです。
そして、DNSは「IPアドレス」と深く関係しています。
この記事では、DNSの基本的な役割や仕組み、IPアドレスとの関係性、そして実際に使われる場面を、初心者にもわかるように丁寧に解説します。

1. DNSとは?インターネットの“住所録”のようなもの
DNSとは、「Domain Name System(ドメインネームシステム)」の略です。
簡単に言うと、人が覚えやすい文字列(ドメイン名)と、IPアドレスを結びつけるための仕組みです。
たとえば、あなたがあるWebサイトを見たいとき、URLにこう入力するかもしれません。
https://example.com
でもインターネットの世界では、実際には以下のようなIPアドレスを使って通信しています。
203.0.113.5
人間にとって「example.com」は覚えやすいですが、「203.0.113.5」のような数字は覚えにくいですよね。
そのため、「ドメイン名 → IPアドレス」に変換してくれる仕組みがDNSなのです。
DNSの役割を一言でいうと
「文字の住所(ドメイン名)」と「数字の住所(IPアドレス)」をつなげる通訳者のような存在。
2. DNSとIPアドレスの関係を身近な例で考える
DNSとIPアドレスの関係を、宅配便にたとえるとわかりやすいです。
- ドメイン名 → 「会社名」や「お店の名前」
- IPアドレス → 「実際の住所」
- DNS → 「住所録を調べる係」
たとえば「〇〇商店」というお店に荷物を送りたいとき、あなたは住所を知らなくても、地図アプリで検索すれば住所が出てきますよね。
DNSはまさにその“住所を調べる”役割をしているのです。

3. DNSの基本的な仕組み
DNSがどのように動いているのかを、Webサイトを開く流れと一緒に見ていきましょう。
3-1. Webサイトを開くときの流れ
- ユーザーがドメイン名を入力
→ ブラウザがDNSに「このドメインのIPアドレスを教えて」と問い合わせる - DNSサーバーが検索
→ ドメイン名に対応するIPアドレスを探す - IPアドレスを返す
→ たとえば「203.0.113.5」という数字をブラウザに返す - 実際のWebサーバーと通信開始
→ IPアドレスを使って目的のサーバーに接続
この一連の動作はほんの一瞬で行われます。
そのため、ユーザーは裏側の仕組みを意識することなくWebサイトを閲覧できるのです。
4. DNSサーバーとは?仕組みの中心的存在
DNSの役割を担っているのが「DNSサーバー」です。
DNSサーバーは、ドメイン名とIPアドレスの対応表を持っているコンピュータです。
主なDNSサーバーの種類は以下の通りです。
4-1. ルートDNSサーバー
インターネット全体の「トップ」に位置するサーバーです。
「.com」や「.jp」などのトップレベルドメイン(TLD)を管理しています。
世界に13系統しか存在しない非常に重要なサーバーです。
4-2. TLDサーバー
「.com」「.jp」など、トップレベルドメインごとの管理を行うサーバーです。
たとえば「example.com」の「.com」の部分の情報はTLDサーバーが管理しています。
4-3. 権威DNSサーバー
ドメインごとの「最終的な住所情報」を持っているサーバーです。
「example.com は 203.0.113.5」という情報を記録しています。
4-4. キャッシュDNSサーバー
実際に私たちが使うインターネットでは、ISP(プロバイダー)や企業が提供するキャッシュDNSサーバーが活躍しています。
一度問い合わせたドメイン情報を一時的に保存しておき、次回アクセス時に素早く応答できる仕組みです。

5. DNSの仕組みをさらに詳しく|名前解決の流れ
DNSは「名前解決」と呼ばれるプロセスによってIPアドレスを見つけ出します。
ここでは、初心者でもイメージできるように簡単に説明します。
5-1. 名前解決の流れ
- ブラウザ:「example.comのIPアドレス教えて!」
- キャッシュDNSサーバー:「知ってるかな?」(キャッシュを確認)
- もし知らなければ、ルートDNSサーバーに問い合わせ
- ルートDNS:「.comならTLDサーバーに聞いて」
- TLDサーバー:「example.comならこの権威DNSが知ってるよ」
- 権威DNSサーバー:「203.0.113.5が住所だよ」
- キャッシュDNSサーバー:「ありがとう、覚えておくね!」
- ブラウザに結果を返し、Webサイトに接続
このように、複数のサーバーを経由して最終的にIPアドレスを取得します。
一度アクセスしたサイトはキャッシュDNSが覚えているため、次回からはもっと早く開けます。
6. DNSの種類と役割
DNSには、いくつかの機能的な種類があります。
混乱しやすい部分なので、簡単に整理しておきましょう。
DNSの種類 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
ルートDNS | ドメイン階層の最上位 | 世界に13系統しかない |
TLDサーバー | トップレベルドメインの管理 | 「.com」「.jp」など |
権威DNS | 実際のIPアドレスを記録 | 住所録の本体 |
キャッシュDNS | 問い合わせ結果を一時保存 | 高速化・負荷軽減に役立つ |
7. DNSとセキュリティの関係
DNSは便利な仕組みですが、セキュリティ上のリスクもあります。
特に有名なのが「DNSキャッシュポイズニング」や「フィッシングサイト」などです。
7-1. DNSキャッシュポイズニング
DNSキャッシュに偽の情報を仕込まれてしまう攻撃です。
本来「example.com」は正しいIPに接続されるはずが、攻撃者のサーバーに誘導されてしまう可能性があります。
7-2. フィッシング詐欺
似たようなドメイン名を使って偽サイトに誘導し、個人情報を盗む手口です。
たとえば「examp1e.com(1とl)」のようなドメインを使われると、気付きにくい場合があります。
7-3. DNS over HTTPS(DoH)の普及
こうしたリスクに対抗するため、近年では「DNS over HTTPS(DoH)」という技術が広まっています。
これは、DNSの通信を暗号化して安全性を高める仕組みです。
8. DNSを確認・変更する方法
DNSサーバーは、プロバイダーのものを自動的に使うのが一般的ですが、自分で変更することも可能です。
8-1. よく使われるDNSサーバー
- Google Public DNS:8.8.8.8 / 8.8.4.4
- Cloudflare:1.1.1.1
- OpenDNS:208.67.222.222 / 208.67.220.220
これらを使うことで、Webサイトの表示が早くなったり、安定した接続が期待できる場合があります。
8-2. DNSの変更方法(Windowsの例)
- コントロールパネル → ネットワークとインターネット
- 「ネットワークと共有センター」→「アダプターの設定の変更」
- 使用中のネットワークを右クリック →「プロパティ」
- 「インターネット プロトコル バージョン 4(TCP/IPv4)」を選択
- 「次のDNSサーバーのアドレスを使う」にチェックし、DNSを入力
9. よくある質問(FAQ)
Q1. DNSは誰が管理しているの?
A. 世界中のDNSサーバーは分散しており、国際機関・企業・ISPなどがそれぞれ管理しています。特定の1社が独占しているわけではありません。
Q2. DNSを変更すると危険?
A. 信頼できるDNS(GoogleやCloudflareなど)を使えば基本的に安全です。ただし、不明なDNSを利用すると情報漏洩のリスクがあります。
10. まとめ|DNSはインターネットの土台
DNSは普段意識されることが少ないですが、インターネットの根幹を支える非常に重要な仕組みです。
最後にこの記事のポイントを整理しましょう。
- DNSとは「ドメイン名」と「IPアドレス」を結びつける仕組み
- DNSはインターネットの住所録のような役割を持っている
- ルートDNS、TLD、権威DNS、キャッシュDNSの4種類が連携して動いている
- DNSを理解すると、通信の流れやセキュリティ対策が見えてくる
- 信頼できるDNSサーバーを使うことで、通信の速度や安全性が高まる
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