行政機関や自治体に対して「この文書を見たい」「自分に関する情報を開示してほしい」と請求する制度があります。
これが、一般にいう開示請求です。
しかし、開示請求をすれば、必ず希望した情報がすべて開示されるとは限りません。
行政機関が内容を確認した結果、
- 一部だけ開示する
- すべて開示しない
- 文書が存在しないとして不開示にする
- 開示する範囲を制限する
といった決定をする場合があります。
では、その決定に納得できない場合はどうすればよいのでしょうか。
そこで登場するのが審査請求です。
本記事では、「開示請求に対する審査請求とは何なのか」という基本から、審査請求の流れ、審査会の役割、行政側の対応、注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。

1.そもそも開示請求とは?
まず、審査請求を理解するためには、開示請求について知っておく必要があります。
開示請求とは、行政機関や地方公共団体などが保有している行政文書や個人情報について、法律や条例に基づいて開示を求める制度です。
例えば自治体の場合、
「市が保有している○○に関する文書を見たい」
「自分について市が保有している個人情報を確認したい」
といった場合に、一定の手続きを経て開示を求めることができます。
ただし、開示請求をしたからといって、必ずすべての情報が開示されるわけではありません。
情報公開制度では、個人のプライバシーや法人の正当な利益、行政運営への支障などを考慮して、一定の情報を不開示とする仕組みがあります。
そのため、
開示請求 → 行政による判断 → 開示・部分開示・不開示
という流れになるのが基本です。
2.開示請求に対する審査請求とは?
では、本題の「審査請求」です。
審査請求とは、行政機関などが行った処分に対して、
「その判断は適切ではないのではないか」
と考える場合に、行政上の不服申立てを行う制度です。
開示請求の場合であれば、例えば、
「全部不開示になったが、本当にすべて不開示にする必要があるのか」
「一部開示されたが、もっと開示できる部分があるのではないか」
「不開示とされた理由に納得できない」
といった場合に審査請求を行うことが考えられます。
つまり簡単に言えば、
開示請求の結果に納得できない場合に、その判断についてもう一度審査してもらうための手続き
が審査請求です。
3.「開示請求」と「審査請求」は何が違う?
この2つは名前が似ていますが、目的がまったく違います。
開示請求
「この情報を見せてください」
という手続きです。
審査請求
「開示しないという行政の判断について、もう一度審査してください」
という手続きです。
例えば、Aさんが市役所に対してある行政文書の開示請求をしたとします。
市役所が、
「この文書は全部不開示とします」
という決定をしたとしましょう。
Aさんがその決定に納得できない場合、
「なぜ全部不開示なのか。もう一度判断してほしい」
として審査請求をすることができます。
このように、
開示請求=情報を求める
審査請求=開示・不開示の判断を争う
と覚えると非常にわかりやすいでしょう。
4.どんな場合に審査請求ができるの?
審査請求が問題になる代表的なケースを見てみましょう。
ケース1:全部不開示だった
最も分かりやすいケースです。
請求人が、
「○○に関する行政文書を全部開示してください」
と請求したところ、行政から、
「全部不開示」
という決定を受けたとします。
請求人が、
「不開示にする理由が不十分なのではないか」
「少なくとも一部は開示できるのではないか」
と考えれば、審査請求を検討できます。
ケース2:部分開示だった
実務上、非常に重要なのが部分開示です。
行政文書の中には、開示できる情報と開示できない情報が混在していることがあります。
例えば、10ページの文書があったとします。
そのうち、
- 8ページ → 開示
- 2ページ → 不開示
という決定になる場合があります。
請求人が、
「その2ページも開示できるのではないか」
と考えれば、その部分について審査請求をすることが考えられます。
ケース3:文書不存在を理由に不開示
「請求された文書は存在しません」
という理由で不開示決定がされる場合もあります。
しかし請求人が、
「その文書は行政機関が保有しているはずだ」
と考える場合には、審査請求によって争うことが考えられます。
ただし、実際に文書が存在するかどうかは、具体的な行政文書の管理状況などを踏まえて判断する必要があります。

5.審査請求をすると何が起こる?
審査請求をしたからといって、すぐに情報が開示されるわけではありません。
通常は、審査請求について行政側で手続きが行われます。
地方自治体の情報公開条例や個人情報保護条例等に基づく制度の場合、具体的な手続きは自治体によって異なるため、ここでは一般的なイメージを説明します。
大まかには、
①開示請求
↓
②行政による開示・不開示決定
↓
③請求人が不服を申し立てる
↓
④審査請求
↓
⑤行政側で審査
↓
⑥審査会等への諮問
↓
⑦審査会等による審査
↓
⑧答申
↓
⑨行政による裁決
という流れになります。
ただし、すべての案件で完全に同じ流れになるとは限りません。
6.情報公開・個人情報保護審査会とは?
審査請求について調べていると、
「情報公開・個人情報保護審査会」
という言葉が出てくることがあります。
これは、開示請求に関する行政側の判断が適切だったかどうかを専門的に調査・審査する機関です。
例えば、
「この情報は本当に不開示情報に該当するのか」
「部分的に開示できるのではないか」
「行政が文書不存在と判断したことは妥当なのか」
といった点について検討します。
審査会は、行政の担当課とは別の立場から審査することが重要なポイントです。
7.審査会は何を確認するのか?
審査会では、単純に「請求人の言い分が正しいか」「行政の言い分が正しいか」だけを見ているわけではありません。
開示請求の対象となった文書や不開示の理由などを確認し、法律や条例に照らして判断します。
例えば、
「個人情報だから不開示」
という判断がされた場合、
「本当に保護すべき個人情報なのか?」
「他の部分と分離して開示できないか?」
などを検討することがあります。
また、
「行政運営に支障があるため不開示」
という判断なら、
「具体的にどのような支障があるのか?」
「不開示とする必要性はあるのか?」
といった点が問題になります。

8.審査請求を受けた行政側の対応
ここは行政職員にとっても重要なポイントです。
審査請求を受けた場合、単純に「不開示にしたから、そのまま」とするのではなく、改めて処分の妥当性を確認する必要があります。
まず確認するのは、
- 審査請求書の内容
- 対象となる処分
- 開示請求の内容
- 不開示とした文書
- 不開示理由
- 適用した法律・条例
- 過去の判断
- 関係する行政文書
などです。
さらに、必要に応じて担当部署や関係部署から事情を確認します。
9.審査請求では「なぜ開示できないのか」が重要
開示請求に対する審査請求で非常に重要なのが、不開示理由の説明です。
行政が、
「個人情報なので不開示です」
とだけ説明しても、それだけでは具体性に欠ける場合があります。
重要なのは、
どの情報が、どの規定に該当し、なぜ開示できないのか
を整理することです。
例えば、
「文書の3ページ目に記載されている○○という情報は、特定の個人を識別できる情報に該当するため、不開示とした」
というように、具体的に整理する必要があります。
もちろん、実際の理由付記については適用される法令や条例、処分の内容などを踏まえて判断する必要があります。
10.審査請求と「再度の開示請求」は違う
ここも混同しやすいポイントです。
例えば、
「以前の開示請求で不開示になったから、もう一度同じ文書を開示請求する」
という方法と、
「以前の不開示決定について審査請求する」
という方法は別物です。
審査請求は、
以前にされた不開示決定の妥当性を争う手続き
です。
一方、新たな開示請求は、
改めて行政文書の開示を求める手続き
です。
同じ文書を対象としていても、制度上の意味は異なります。
11.審査請求には期限がある
審査請求をする場合には、期限にも注意が必要です。
行政不服審査法では、審査請求には原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内という期間制限があります。
ただし、具体的な案件では処分の種類や経過、適用される法令などによって確認すべき点があります。
そのため、
「不開示決定を受けたけれど、いつまでに審査請求すればいいのかわからない」
という場合は、決定通知書や自治体の案内を確認することが重要です。
期限を過ぎると審査請求ができなくなる可能性があるため、注意しましょう。
12.審査請求をしたら必ず開示される?
これは非常に重要です。
審査請求をしたからといって、必ず情報が開示されるわけではありません。
審査の結果、
「行政の不開示決定は妥当」
と判断される場合もあります。
一方で、
「不開示とした判断は妥当ではない」
と判断されれば、行政側が決定を変更し、全部または一部を開示する方向になる場合があります。
つまり審査請求は、
開示を保証する制度ではなく、行政の判断が適切だったかを改めて審査してもらう制度
と考えることが重要です。
13.具体例で見る「開示請求→審査請求」
ここまでの内容を、一つの具体例で整理してみましょう。
例えば、市がある公共施設の建設について検討しているとします。
住民Aさんは、
「その施設の建設に関する検討資料を見たい」
と考え、市に対して開示請求をしました。
市は文書を確認した結果、
「個人情報が含まれている部分について不開示」
として、その他の部分を開示しました。
Aさんは、
「個人情報以外の部分まで黒塗りになっている。もっと開示できるのではないか」
と考えました。
そこで、
「この不開示部分について判断を見直してほしい」
として審査請求を行います。
その後、審査会などで、
「本当に不開示にする必要がある情報なのか」
「開示できる部分と不開示部分を分けられないか」
などが検討されます。
最終的に行政が判断を行い、必要に応じて開示範囲が変更されることがあります。
このように、審査請求は開示請求者が行政の判断について再検討を求めるための重要な制度なのです。
14.審査請求をするときの注意点
審査請求をする場合には、いくつか注意したいポイントがあります。
① 何が問題なのかを明確にする
単に、
「納得できない」
と書くより、
「○○の部分について不開示とされたが、その理由に疑問がある」
など、具体的に記載することが重要です。
② 不開示理由を確認する
決定通知書には、不開示とした理由が記載されています。
まずは、
「行政はなぜ不開示にしたのか」
を確認しましょう。
③ 期限を確認する
審査請求には期間制限があります。
決定通知を受け取ったら、できるだけ早めに内容を確認しましょう。
④ 開示請求と審査請求を混同しない
新たに情報を求めたいのか、既にされた不開示決定を争いたいのかによって手続きが変わります。
15.行政職員が理解しておきたいポイント
行政側から見ると、審査請求は通常の開示請求よりも慎重な対応が求められる場面です。
特に重要なのは、
「なぜその判断をしたのか」を説明できる状態にしておくこと
です。
例えば、
- どの文書を確認したのか
- どの部分を不開示にしたのか
- どの規定を適用したのか
- なぜその規定に該当するのか
- 部分開示の可能性を検討したか
- 過去の判断との整合性はあるか
などを整理しておく必要があります。
審査請求は、単なるクレーム対応ではありません。
行政が行った処分の適法性・妥当性を改めて確認する重要な行政手続き
として考える必要があります。
16.まとめ|開示請求に対する審査請求とは?
ここまで、開示請求に対する審査請求について解説しました。
最後に重要なポイントを整理します。
開示請求とは?
行政機関などが保有する行政文書や個人情報について、開示を求める手続きです。
審査請求とは?
開示・不開示などの行政の決定に不服がある場合に、その判断について審査を求める手続きです。
どんな場合に行われる?
- 全部不開示になった
- 部分開示だったが、さらに開示してほしい
- 文書不存在という判断に納得できない
- 不開示理由に疑問がある
といった場合などです。
審査会とは?
開示・不開示の判断について、専門的な立場から審査する機関です。
必ず開示される?
いいえ。審査の結果、元の不開示決定が妥当とされる場合もあります。
おわりに
「開示請求」と「審査請求」は、名前が似ているため混同されがちですが、役割は大きく異なります。
開示請求は、
「情報を見せてください」
という制度。
一方、審査請求は、
「その開示・不開示の判断が本当に適切だったのか、もう一度審査してください」
という制度です。
行政が保有する情報を適切に公開し、同時に個人情報や行政運営上保護すべき情報を守るためには、こうした不服申立ての仕組みが重要です。
行政の判断に不服がある場合でも、単に行政と請求人が対立するのではなく、法律や条例に基づいて判断の妥当性を確認できる仕組みが用意されています。
開示請求を利用する人にとっても、行政職員にとっても、**「開示請求→開示・不開示決定→審査請求→審査→裁決」**という基本的な流れを理解しておくことは、行政手続きを正しく理解するうえで非常に重要です。


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